
楽しい夏休みも気が付けばもう少し、自由研究どうしよう…。そんな悩みをかかえる小・中学生も多いのではないでしょうか。今回の記事では、元理科教員が、「手軽に終わらせたいけどそれっぽくみせたい人」に向けたテーマやまとめ方を、次回の記事では「質のよい研究をしたい人」や「入賞できるような作品をつくりたい人」に向けた解説をしていきます。理科研究の審査員も経験しているので、作品をよく見せるコツなども解説していきます。それでは、いってみましょー!!
手軽に終わらせたい!けどそれっぽく見せたい人向けテーマ
そもそもみなさんが自由研究をやる理由って何でしょうか。「楽しいから!」「研究で考える力を身につけたい!」…そんな小中学生はごくごく少数でしょう。「宿題だから」「出さなきゃ怒られる」こっちが大多数ではないでしょうか。
しかし、提出したとしてもあまりにひどくて再提出…。なんてことはさけたいですよね。(実際に私も再提出宣言は出したことがあります。(笑))でも大丈夫です。どんな研究でも少しの工夫で質は飛躍的に上昇します。
モノをつくる「工作系」
手作り作品は自由研究の定番ですね。ただし、学校によっては「目的と考察を必ず書くこと」「実験を必ず行うこと」など、単純にものをつくるだけではダメな場合もあるかもしれません。そんな場合でもおすすめの工作を紹介します。
スライムづくり

手作り工作ではおなじみのスライム。材料は「洗濯のり」と「ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム)」でいずれもドラッグストアなどで入手可能です。スライムづくりを自由研究っぽくみえるようにまとめてみましょう。
まとめの例
①タイトル「スライムのねばりけの秘密をさぐる!」
②実験のきっかけ
自分でつくってみたスライムと、売っているスライムのかたさがちがうことに気が付いた。このかたさのちがいは何なのか、実験で調べてみたいと思った。
③予想
スライムの原料は「洗濯のり」と「ホウ砂」なので、それぞれの量がかたさを決めていると思う。ホウ砂水を入れると洗濯のりがかたまってくるので、ホウ砂水を多めにするとスライムはかたくなると思う。
④用意したもの
- 洗濯のり
- ホウ砂水(ホウ砂20gを250mlのぬるま湯に溶かしたもの)※溶け残っても大丈夫です。ただし、溶け残りはまぜないようにしましょう。
- 好きな色の絵の具
- 計量カップ、かき混ぜ棒、容器
④実験と結果
A:洗濯のり100ml+水100ml+ホウ砂水20ml
とろとろで手につくくらいの柔らかいスライムになった
B:洗濯のり100ml+水100ml+ホウ砂水35ml
手につかず、よくのびるスライムになった
C:洗濯のり100ml+水100ml+ホウ砂水50ml
あまりのびない、弾力のあるスライムになった
⑤まとめ
ホウ砂水を多く入れたスライムが固くなった。スライムのかたさを決めているのは、ホウ砂水だということが分かった。
など。
✩ここで注意したいのは、「ホウ砂水以外の分量は変えないこと」です。洗濯のりと水の分量は、A、B、Cすべての実験で100mlにしました。これは、「スライムのかたさを決めているのはホウ砂水の量」であることを調べるためです。ホウ砂水の量を増やしても、洗濯のりの量が毎回違っていたら、正しく検証できないですよね。このような実験を「対照実験」といいます。この「対照実験」がそれっぽく見せるポイントです!中学校で習うはずなので、まだの人は覚えておきましょう。
身近なものでろ過装置をつくってみた

日本は地震や豪雨などの自然災害が多く、ときに水道などのライフラインに影響を与えます。泥水でも「ろ過」してあげれば、きれいな水になりますので、災害対策として、また、最近話題の「SDGs」と関連付けて、研究の目的を書いてみるとそれっぽくなります。
まとめの例
①タイトル「身近なものでろ過装置をつくってみた」
②研究のきっかけ
日本は地震や集中豪雨などの自然災害が多く、今後水道が使えなくなることもあるかもしれない。また、SDGsの目標6には「安全な水とトイレを世界中に」という目標が掲げられ、安全な水の確保は世界的に見ても重要な課題と言える。そこで今回の研究では、身近なものでろ過装置をつくり、実際にきれいな水をつくることができるか、実験してみた。
③用意したもの
- ペットボトル
- カッターナイフ
- キリ
- 水をためる容器
- 綿
- 砂利
- 砂
- 炭
④装置のつくり方
ペットボトルを切る: まず、ペットボトルの底の部分をカッターナイフで切り離します。
キャップに穴を開ける: ペットボトルのキャップにキリなどで小さな穴を数か所開けます。
逆さにしてろ過材を詰める: キャップがついている方を下にして、切り口が上になるようにします。キャップは閉めたままにしておきます。
ろ過材を順番に入れる: ろ過材を詰めていきます。このとき、ろ過材を詰める順番が重要です。
- 一番下: キャップのすぐ上に綿や布を詰めます。
- その上: 次に、砂を入れます。
- さらに上: その上に活性炭を入れます。活性炭は、匂いや色を吸着する効果があります。
- 一番上: 最後に、砂利を入れます。一番大きい砂利を一番上に入れることで、大きなゴミを最初に受け止めます。
⑤実験
泥水をつくり、実際にろ過してみましょう。
✩余裕がある場合は、ペットボトルのサイズや形状を変える、ろ過材の厚さを変えてみる、泥水の濃さを変えてみるなど、条件を変えることで簡単に多くの実験データを得られるのでおススメです!

(↑私も実際に作ってみました。例えば、醤油のボトルを使えば、フタの開閉が楽ちんになり、穴を開ける必要もありません。木炭もこの実験のためだけに買うのももったいなかったので、その辺の木を燃やして作りました。穴が大きく水が勢いよく出るためか、濁りが多い印象…。これもネタにできますね!みなさん、私の意思を継いで改善してみてください!(笑))
⑥まとめ
実際にやってみてうまくいったこと、この条件ではうまくいかなかった、など、失敗したことも書いておくと研究としての質が高まります。手軽にできますが、対照実験の幅が広く、少し手間をかければ入賞も狙えるテーマだと思います。
身近なもので10円玉をぴかぴかにしてみた

ド定番中のド定番ですね。(笑)夏休みになると全国の小中学生が一斉に10円玉を磨き始めるのではないでしょうか。コツは「なるべく多くの写真を撮ること」です。実験材料、磨いているところ、結果、などなど。どの研究でもそうですが、写真があると簡単なことでもそれっぽく見えます。タブレット端末の配布やスマホの普及で、写真撮影や印刷のハードルはかなり下がりました。時間に余裕がある人は、データを多めに用意しておくとよいでしょう。
構成例
①タイトル「身近なもので10円玉をピカピカにしてみた」
②研究の目的
身近なもので実験してみたかったから、〇〇が効果的だと聞いたので、ためしてみたかったから、など。
③用意したもの
実際に実験に使用したモノを紹介しましょう。
④実験の様子、結果
⑤考察
酸が効果的だとわかった、など。そのほか、気づいたことや失敗したことなどもあれば書いておくとよいでしょう。
✩テーマが定番すぎて入賞等はまず無理です。(笑)しかし、手軽に実験できるので人気の研究テーマですね。(毎年必ず学年で5人は10円玉の磨き実験をやってくるイメージ。)とにかく写真を多くして、研究っぽく見せましょう。
(研究として少しでも差別化を図るなら、ピカピカにする「早さ」に注目するなどでしょうか。多くの人は磨いて終わりですが、きれいになる「時間」に注目すると、ほかの人と差別化できるかもしれません。)
標本や写真コレクション作成

標本といっても、昆虫標本はハードルが高めです。おススメは植物の種や石など、手軽に集められて保存のきくもの。また、街で見かけたマンホール写真集、雲の写真集など、実物ではなく、写真を集めるのも面白いですね。
標本や写真集として重要なのは、「情報」です。例えばそのものの種類だけでなく、採集日、採集場所、採集者など、標本や写真を説明する情報を入れると、一気に価値が高まります。
余裕がある人は、情報やデータをまとめたノートなどを提出すると、一気にそれっぽくなります。実際に標本の数や情報量をとんでもなく充実させ、最優秀賞を受賞している作品もありました。
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!まだまだたくさん紹介したいですが、今回は「手軽さ」と「それっぽく見せやすさ」に着目してテーマを厳選しました。中には「全然手軽じゃないよ…」と思った人もいるかもしれませんが、適当にやって再提出、なんてことにもなりかねないため、ある程度の質は確保しておくことをおススメします。課題である以上評価もされますし、人前に出すものでもありますので、「それっぽさ」を出すための工夫も紹介してみたつもりです。みなさんの自由研究の助けになれば幸いです。次回は、審査員経験者の視点から「作品のレベルを上げるコツ」「入賞できる作品の特徴」を紹介していきます。読んでいただけると嬉しいです。それでは、また!
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